研究概要 |
Potyvirusグル-プウイルスは,植物ウイルスの中で最も大きなグル-プで,個別のウイルス・系統は数百種にものぼり,その判別は極めて難しい。そこで本研究では,Potyvirusグル-プウイルス・系統を特異的に判別するための非放射性核酸プロ-ブの作製を最終目標として,各種実験を行なった。平成3年度はPotyvirusとしてインゲンマメつる枯病病原ウイルス(クロ-バ葉脈黄化ウイルス:CYVV)とカブモザイクウイルス(TuMV)を取り上げた。まず,CYVVはインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)のえそ系との判別が宿主範囲では難しかったが,ウエスタンブロット法により容易に区別できることが明らかとなった。また,CYVVのRNAを抽出し,cDNAを合成してクロ-ニングを行なったところ,多数の組換え体が得られた。さらにベクタ-のPUC19とcDNAを含む組換え体を抗血清を用いて検査したところ,外被タンパク質を含む融合タンパク質を産生している組換え体が数個体得られた。現在,これらのクロ-ンを用いてCYVVの塩基配列について検討中である。次にTuMVについては,ダイコンに感染するがキャベツに感染しないダイコン系と,ダイコンには感染しないがキャベツに感染するキャベツ系の2系統を分離し,性状比較を行なった。その結果,両系統は汁液接種試験では判別宿主により区別できるが,抗血清を用いたウエスタンブロット法では区別できないことが判明した。両方の系統が混在すると,お互いに助けあってダイコンにもキヤベツにも感染できるようになったことから,両系統の宿主範囲の差は細胞間移行に関与する遺伝子の差によるものと考えられた。現在,両系統のRNAのcDNAの合成は終了し,塩基配列について検討中である。さらに,両系統の封入体に対する抗血清も作製中である。フォトビオチン標識プロ-ブによる検出法は確立された。
|