昆虫の細胞培養用培地の1つであるMGMー450培地を基本培地とした約50種類の培地を用い、多胚性寄生蜂キンウワバトビコバチの2細胞期胚子を中心に培養条件、特に培地組成について検討をおこなった。その結果、1%以上のアルブミンは桑実胚形成までの発育に不可欠であり、その種類としては血清アルブミンが最も効果が大きく、オバルブミンとコナルブミンはこれに劣り、ラクトアルブミンではむしろ毒性が認められた。また、桑実胚以降の発育には培地の無機塩をDー20培地の無機塩、糖として0.25%ショ糖に置き換えた修正MGMー450培地で良好な結果が得られ、一部にpolygermの形成が認められた。polygermの形成率の向上を目的とした昆虫ホルモンの添加効果について検討した結果、juvenile hormone(JH)にこの効果が認められた。JHの種類としてはJH Iが最も効果が大きかったが、JH II、JH IIIいずれでも形成率の向上が認められた。一方、20ーhydroxyecdysoneにはこのような効果は認められなかった。Polygerm形成におよぼす培地中のアミノ酸組成としては、MGMー450培地のアミノ酸組成が種々の昆虫細胞培養用培地のアミノ酸組成の中でも最も適していた。また、牛胎児血清の添加はpolygerm形成率の向上をもたらした。 次に桑実胚期からの培養用培地について検討した結果、アルブミンと昆虫ホルモンの効果は明確でなく、MGMー450培地、修正MGMー450培地いずれでも80ー90%がpolygerm形成に至った。
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