研究概要 |
寄生蜂の寄主発見過程には,以下の6段階の過程から成り立っていると考えられている。 (i)羽化後のランダムな移動 (ii)寄生昆虫の生息域の発見 (iii)寄主の認知 (iv)寄主の発見 (v)寄主の容認 (vi)寄主への産卵これらの過程の中で,(ii)と(iii)の段階に作用する寄主由来の化学的刺激(カイロモン)の精製と作用の生物検定に独創的な発展をもたらした。この結果,ルビーアカヤドリコバチに対する産卵刺激物質の解明,ヤノネキイロコバチの寄主選好性に関与する刺激物質の解明,カリヤサムライコマユバチの寄主探索行動に関与する刺激物質の発見という研究成果をあげた。 (iv)の段階に到る過程で,寄生蜂の寄主昆虫の食草が寄生蜂の行動にも影響を与えていることが解明された。 寄生蜂は緑色植物の匂いに誘引され,さらに寄主昆虫の加害した食草の匂いに誘引される。 (V)と(vi)の段階に働く刺激物質として,寄主昆虫の近傍で作用する誘引物質と,寄主昆虫の体表に存在する産卵管挿入に作用する物質の解明がカリヤサムライコマユバチについて検討されている。 この最終目的は人工卵の調製である。 今後も研究されなければならない。 寄生蜂の寄主発見行動の解析とその解発に作用する化学刺激の解明には,それらの知見の害虫防除への利用という重要な課題も含まれている。この点に関しての予備的実験でカイロモン散布した生息域のアワヨトウのカリヤサムライコマユバチによる寄生率が上昇した。 今後の実験槻模の拡大により確認する必要がある。
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