殺虫性毒素産生細菌のプラスミド依存性ファ-ジを用いた分子育種に関する研究において、殺虫性毒素遺伝子を含むプラスミドとそれに組込まれたプロファ-ジの関係を分子生物学的に検討し、以下に述べる研究成果が得られた。 1)Bacillus thuringiensis AF101株の毒素遺伝子を含み、プロファ-ジJ7Wー1を組込んだプラスミドpAF101のHindIIIおよびXbaI消化DNA断片をクロ-ニングすることにより、J7Wー1ファ-ジゲノムのほぼ全領域とpAF101の約80%のDNAライブラリ-が作製された。これらDNA断片のうち、HindIII DNA断片においては形質転換株においてタンパク質の発現は認められなかったが、XbaI DNAを組込んだキメラプラスミドのうち9.2kb DNA断片をもつpXB9ー4において62kdalのペプタイドの発現を形質転換株において認めたほか、5.3kb DNA断片をもつpXB5ー14、6.8kb DNA断片をもつpXB7ー12でそれぞれ、78kdalおよび48kdalのペプタイドの発現が認められた。また、pXB9ー4に組込まれた9.2kb XbaI DNA断片には62kdalのペプタイドをコ-ドする遺伝子がプロモタ-領域を含んでクロ-ニングされていることが判明した。 2)プラスミドpAF101の生物学的機能を検討する上で必要不可欠な要因となる制限地図の作製を上記したDNAライブラリ-を用いて行った。この結果、pAF101におけるJ7Wー1ファ-ジゲノムの領域が明らかになったほか、AF101株が保有するJ7Wー1とは別種の紫外線誘発性ファ-ジKKー88のファ-ジゲノムの一部と相同性のある領域がpAF101に存在することを見いだした。 3)KKー88ファ-ジゲノムにおいて、これまでプラスミドに組込まれていると考えられていたが、KKー88のゲノム解析の結果、KKー88ファ-ジゲノムのすべて、もしくは大部分は染色体上に存在するが、その一部の領域はプラスミド上の領域と重複しているという結果が得られた。
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