1.鹿児島市内の照葉樹林3ヶ所に、定期的な野外調査地を設定し、クスノキ科、シキミ科の4種の樹木の葉に虫えいを形成するタマバエ類の羽化時期(羽化開始日、50%羽化日、羽化終了日)を調査するとともに、寄主植物の新芽の伸長や開葉調査を行い、産卵対象になる好適な新芽の長さ、50%開葉日などを明らかにした。これらのデ-タに基づいて、タマバエの羽化と寄主植物の開葉との同時性を検討した。 2.これらのタマバエ類に寄生する寄生蜂として、ハラビロクロバチ科の1種、コガネコバチ科の3種、コマユバチ科の1種が存在することを確認し、これらの産卵時期、寄生率と羽化時期(羽化開始日、50%羽化日、羽化終了日)などを明らかにした。とくに、シロダモタマバエに対するコマユバチ科の1種の寄生率が極めて高かったので、寄生蜂の羽化曲線を作成することができた。 3.タマバエ類の成虫を捕食するクモ類の営巣状況(クモの個体数や葉当たり営巣率など)を調べ、クモ類による成虫の捕食率を推定した。 4.各地で採集した虫えいを解剖することによって、タマバエ類の発育段階や生存率、寄生率などを調査した。 5.早朝から実施した野外での成虫の日周活動調査においては、ビデオカメラによる撮影と目による実際の観察によって、2種のタマバエについて、成虫の羽化時刻や群飛時刻、交尾時刻、交尾所要時間、産卵時刻、産卵所要時間などを明らかにした。同時に、1匹の雌による複数回交尾の有無を調べ、タマバエ類では普遍的ではないことを確認した。また、雌の解剖により1雌当たりの蔵卵数も調べた。
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