1.前年度に設定した鹿児島市内の照葉樹林内の野外定期調査地で、前年同様、クスノキ科、シキミ科の4種の樹木の葉に虫えいを形成するタマバエ類を対象に、成虫の羽化時期、寄主植物の新芽の伸長や開葉時期、寄生蜂類の寄生率と羽化時期、捕食者の活動などに関する調査を行った。産卵対象になる好適な新芽の長さは前年度と変りはなかったが、50%羽化日や50%開葉日、寄生蜂の寄生率などに年次変動が見られた。 2.従来の調査に加えて、ブナ科のマテバシイ林でタマバエ類を調査したところ、マテバシイの茎葉に虫えいを作るタマバエ1種を新たに発見した。分類学的な比較研究の結果、このタマバエは新属新種であることが判明した。また、野外調査のデ-タから、成虫の羽化期が春の正常な新芽の伸長時期にシンクロナイズせずに、夏から秋の遅れ芽にシンクロナイズしているという寄妙な生活史が明らかとなってきた。 3.さらに、今年度はアオキナどの果実に虫えいを形成するタマバエ類の調査を行なった結果、アオキの裁培品種では成虫の羽化時期と開発期とのずれがあり、加害の対象にならないことが分かった。 4.主として、九州の各地で調査・採集した虫えいを解剖することによって、タマバエ類の発育段階や生存率、寄生率などを調査した。
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