研究概要 |
キボシカミキリの地理的変異を生理的な面より検討するためエステラ-ゼザイモグラムについて研究を行った。 成虫は西日本型として鳥取,関金,島根,徳島,愛媛,東日本型として福島,群馬,宇都宮の各地より採集した。成虫はそのまま,幼虫は各地成虫のペアを物り,桑の枝条に産卵させ,孵化幼虫は桑葉あるいは人工飼料を用いて飼育し実験に供した。電気泳動は1%アガロ-スゲルを用いて行い,エステラ-ゼは基質としてαーあるいはβーナフチル酢酸を用いてジアゾブルーBで検出した。 1.卵期および幼虫期における発育に伴うエステラ-ゼザイモグラムの変動について調べた。卵期には活性が強く,αーナフチル酢酸に反応するバンドGがあらわれ,他に活性の弱い2本のバンドが発現した。その後,5日目頃よりバンドGの消滅と新たに数本のバンドの発現がみられた。幼虫期は11本のバンドがみられ,1〜2齢期はバンドH以上で活性が強く発現し,3齢以後他のバンドも除々に活性をましてきた。 2.成虫におけるエステラ-ゼザイモグラムについて調べた。成虫において,原点より陽極側へ移動するバンドが多く検出され,変異のみられる原点から中位までのバンドA,B,C,Dについて地理的変異を検討した。バンドAにおいて,東日本型で発現が30〜30%みられた。しかし西日本型では鳥取において約30%みられた他は全然みられなかった。その他のバンドでは東日本型と西日本型で差異はみられなかった。 また,バンドAに関して,発現個体と発現しない個体の交雑による調べた結果、F_1ではすべて発現し,そのF_2では発現は3:1に分離した。しかがって,これは優性遺伝子と考えられる。 以上の結果、エステラ-ゼザイモグラムの地理的変異はバンドAが東日本では発現するが西日本では鳥取を除いて現現しないことで認められた。
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