研究概要 |
土壌酸性ストレス要因改良法に関する日本の研究は歴史的にも世界に誇り得る高度なものであるが,広大な面積を占めるオキシソル等を含めたもの迄に至っていない。本研究は日本国内に存在する各種鉱質酸性土壌(黒ボク土,酸性褐色森林土,赤黄色土,酸性硫酸塩土等)を用い,改良のための包括的理論を構築することを目的としている。その結果,(1)アロフェン,非晶質Fe・Al水和酸化物に由来する変異荷電を主体とする土壌(鳥海山,月山,金峯山,宝谷,根松,沖縄)ではリン欠乏,一部の土壌ではさらにMo欠乏も考えられる。(2)石膏施用で,上記土壌の変異荷電がSO^<2ー>_4と配位子交換によりOH^ーを放出し,土壌pHが上昇し,ダイコン,特にテンサイの生育が著しく改善され,炭カル施用を上まわる。(3)2:1型永久負荷電を主体とする土壌(白狐山,秋田出羽)では炭カル必要量は多いがその改良効果は高く,石膏施用ではSO^<2ー>_4が酸根として作用し,pH低下,Al放出による作物のAl過剰,塩基欠乏による著しい生育低下となる。(4)1:1型粘土鉱物を主体とする土壌は前二者(アロフェンや三二酸化物を主体とする土壌と2:1型粘土鉱物を主体とする土壌)の中間的傾向である。(5)2:1型粘土鉱物を主体とする酸性硫酸塩土壌(沼ノ倉,別当ケ沢)は基本的に(3)と類似しているが,水溶性塩類濃度が高いために塩基欠乏やAl過剰が発現しにくい。(6)Al集積性植物,特にソバ,ビ-トは地上部Al含有率が土壌の可給態Al量を反映するので,土壌のlabile Alを知るための指標植物として有用である可能性が示唆された。以上の結果,二次鉱物の定量的評価による土壌酸性ストレス要因改良法の構築が可能であると判断された。
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