培地硝酸イオン濃度、日周的な光の明暗、植物体茎葉部と根部の温度格差等の変動下におかれた植物個体による硝酸態窒素の吸収同化に関して、吸収・代謝・輸送諸過程の変動を同時に調べ、次の諸点を明らかにした。 高濃度培地に移されたイネでは、硝酸対窒素の主要な還元部位である茎葉部への新規窒素の輸送低下を引き起こし、根部にアミノ酸やNO_3^-が蓄積し吸収が抑制されるに至る。それにより、茎葉部が極端な窒素過剰になることを防いでいる。コムギの場合も基本的には同様であり、窒素同化量と同化に要するエネルギー消費量が増え、その不足は茎葉部や根部での窒素同化過程の活性を低下させる前に、導管への窒素送り込み過程の活性を低下させ、それにより根部硝酸イオン濃度の飽和と硝酸イオン吸収速度の低下が起こるものと考えられる。 暗期のコムギ根部では、新規に吸収されたNO_4^-の還元同化過程は吸収過程ほど低下しない。明期の茎葉部では硝酸還元過程は律速段階とならずそれ以降の同化過程が律速段階となると考えられる。暗期の後期には硝酸イオンの吸収速度は著しく大きく、移動率はかなり高いが、その暗期終了時の還元率は極めて低いと考えられる。新たに吸収したNO_3^-は古いNO_3^-よりも優先的に還元され、また茎葉部へ移動している。 根部に対し茎葉部温度が高いコムギの場合は茎葉部における蛋白合成が促進されるが、吸収量はやや減少し茎葉部への移動量も減少して統一性が崩れる。茎葉部温度が低い場合は、茎葉部への窒素移動量が減少し、そこでの蛋白合成量、還元態窒素量も移動量の減少に付随して減少し。同化の全ての過程が低下する方向に変化するという点で統一性がある。
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