研究概要 |
土壌中の微生物バイオマスは各種の生元素やエネルギ-の循環ポンプの討割を果たしている。本研究では既応の知見が極めて限られている水田土壌に対象を絞り、今年度はまず定量方法を確立した。すなわち11種の代表的水田土壌をクロロホルムで燻蒸殺菌処理をした後、死滅菌体に由来する有機態炭素を抽出し全炭素分析計と赤外ガス分析装置を組み合せせてバイオマスCを定量した。また同じ抽出液中の有機態窒素やアミノ酸態窒素をケルダ-ル法、比色法などで定量しバイオマスNを算出した。一方、土壌から微生物由来のATP(アデノシン三リン酸)を抽出しバイオルミネッセンス法で定量し、上述のバイオマスC,Nの結果と比較した。 その結果、バイオマスNはATPと高い正の相関係を示し、上述の方法が水田土壌でも十分適用できることを明らかにした。この燻蒸・抽出法は従来の直接顕鏡法や燻蒸・培養法などに比較し、操作が簡単で迅速に行えることが特徴である。なおATPは最も粘質な土壌から定量的に回収することが困難であった。 次にこの方法を用いて、水田土壌を湛水状態にして水稲を移植した場合のバイオマスの経時変化を解析した。その結果、バイオマスま湛水直後から急激に増加し、20〜40日目頃にピ-クに達し、その後次第に減少した。この変化は水稲を植えない区でもほぼ同じ傾向であった。一方、光が当たらないようにした処理区ではバイオマスがほとんど変化せず、上記の増減は田面水に繁茂する藻類などと関係があると推察された。 今後は植物栄養吸収量や田面水中の藻類生育量を測定することにより、土壌ー植物系におけるバイオマスの意義を定量的に解明する共に、ATPなどの定量結果からエネルギ-チャ-ジを算出し、水田土壌中のバイオマスの特質を明らかにする予定である。
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