研究概要 |
土壌中の微生物バイオマスは各種の生元素やエネルギ-の循環ポンプの役割を果たしている。本研究では既応の知見が極めて限られている水田土壌に対象を絞り、定量方法について検討を行い、次いで水稲の窒素(N)吸収量とバイオマスN量および土壌無機態N量を比較した。さらにバイオマスのエネルギ-状態の指標となるアデニレ-ト・エネルギ-チャ-ジ(AEC)を算出した。概要は以下の通りである。 1.水田土壌中の微生物バイオマスの定量方法の検討:本研究で導入した全有機体炭素計を用いて、供試した11種の水田土壌中の微生物バイオマスCを精度よく(変動係数5%以内)迅速に定量できるようになった。またグルコ-スやフタル酸水素カリウム標準液も用いて、従来のチュ-リン法と比較を行い、高い正の相関関係が見出された。さらにバイオマスNやATPとも正の相関関係を示すことが確かめられた。 2.土壌ー植物系における生元素動態の解明:水田土壌2種を用いたポット実験により、水稲生育期間中のバイオマスNの変化と水稲吸収N量の経時的変化を調べた。水稲を植えないポットとの比較を行ったところ、水稲を植えたポットの方がバイオマスNや土壌無機態Nは低く推移し、水稲による吸収の影響が見出された。 3.湛水土壌と非湛水土壌におけるバイオマスのエネルギ-状態の比較:土壌を湛水することにより形成される嫌気的条件が、バイオマスおよびそのエネルギ-状態に及ぼす影響を調べた。バイオマス定量にはバイオマスCやNおよびATPを用い、同時にADP,AMPも抽出し酵素反応後に定量した。それらの結果から、AECを計算したところ、湛水によってバイオマスの減少と平行してAECが低下し、嫌気的条件に適応した一部のバイオマスのみ生き残った可能性が強く示唆された。
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