研究概要 |
1.はじめに腐植の抽出方法について従来の加熱抽出と室温抽出を比較検討したところ、抽出率はやゝ低下しても、室温抽出の方が実験操作が簡易であり、抽出腐植の特徴も加熱抽出同様かそれ以上に明瞭であったため、今後の実験では室温抽出を用いることとした。 2.加熱しないと抽出されない腐植は、室温抽出に比べて色がうすく、そのため加熱抽出による腐植は全体として室温抽出の腐植よりも腐植化度が低い傾向を示した。 3.A型腐植酸をもつ土壌については、抽出腐植の△logK,Color DensityまたはMelanic Indexによって明瞭に区分された。さらにCDの値を用いて,A型腐植酸をもつ土壌をいくつかに細区分することが可能であった。 4.NMRによる腐植の分析結果からは、同じA型腐植酸でもその中味は多様であり、CD値の大きい典型的なA型腐植酸の場合は、芳香環及びカルボキシル基に富み,CD値の小さい淡色黒ボク土の場合は芳香環は少なく、直鎖構造が多くなり、腐植化の進行方向が化学構造と関連して明瞭となった。この点については赤外吸収との関連もふくめ、より多くの試料について,次年度においてさらにくわしく検討する予定である。 5.土壌の微細形態については、土壌薄片の作製方法がほぼ固まった。その際、本年度備品として購入したニュ-パワ-カッタ-が、極めて有効であった。次年度は形態観察をより詳細に行ない、腐植化の過程を中心に、土壌化の進行について検討する予定である。
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