研究概要 |
平成2年度の研究計画で述べた6項目のうち、1から4までの現地試験区設定および造成前後の試料採取・分析を行なった。以下、各項目について概要を述ベる。(1)不耕起造成試験地および対照地の選定:青森県中央部の山間地の広葉樹林内(上北郡天間林村)の七戸畜産農業協同組合の放牧場の造成予定地内に、面積約0.31haの試験地を設定した。またこれに隣接する林地を対照地として選定した。(2)造成前後の試験地の植生、土壌等の調査および試料採取:造成前、造成直後および造成後の適当な時期に植生等を調査後、土壌および木片試料を採取した。(3)ツルグレンおよびべ-ルマン法による中型土壌動物の抽出および同定・計数:造成直前の試験区のトビムシおよびダニ類は10,000匹/m^2前後であったが、造成直後には3,000匹/m^2前後、とくに木片の多い地点では、ほとんど認められなくなるほどに減少した。しかし、造成3か月後の10月には5,000匹/m^2前後と造成直後よりは増加した。また、ダニ類の割合は造成前の表層土壌では20%前後であったが、造成直後には50%前後に増加した。造成前の粗腐植層のそれは50%前後であったことから、造成によって粗腐植層の大部分が表層土壌と混合されたためと推察された。(4)希釈平板法による土壌試料中の細菌、放線菌および糸状菌の菌数測定:造成前の細菌、放線菌および糸状菌の菌数は乾土1グラムあたりの対数ではそれぞれ6、6および4のオ-ダ-であった。造成直後には、これらの菌数はいずれの菌種でも1づつ増加した。しかし、木片の多い区では少ない区に比べて1前後小さくなった。また、細菌および放線菌のうち低栄養型のDNB菌と高栄養型のNB菌とでは、木片の多少による反応が異なっていた。以上のことから造成時の土壌撹乱は微生物相が増殖しやすい条件を与えるが、破砕木片の存在はむしろ菌数を減少させる働きが強いと推察された。
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