研究概要 |
メチオニン(Met)過剰食(8%カゼイン+3%Met,8C3M),更に8C3M食に3%グリシン(Gly)を添加した8C3M3G食でラットを飼育し,諸臓器,血液,尿の各種クロマトグラムを対照群(8%カゼイン,8C)と比較し,一方にのみ認められる成分,及び大きく変動する成分を調べている過程で,尿のガスクロマトグラム上に,8C群では検出されず8C3M群で著増し,8C3M3G食にすると減少する二つのピ-クを見出し,それ等が,αーケトーγーメチルチオ酪酸(1),とαーヒドロキシーγーメチルチオ酪酸(2),と同定された。(1)はMetのtransaminationにより生ずるものであり,この結果は,Met過剩食ではtransamination経路が実際に動いているが,Gly添加によりtranssulfuration経路で処理できるできるMetが著増し,transamination経路で代謝されるMetの比率が大きく低下することを示すものと考えられ,Met過剰摂取ラットでtransamination経路が実際に機能していることを初めて確認することができた。(2)はMet代謝経路上の化合物ではないが,(1)より酵素反応により生ずるものと考えられる。又、以前,ラット肝臓より新グルタチオン類縁体であるγーグルタミルセリルグリシンを見出したが[T.Kasai,et al.Agric.Biol.Chem.,53,549(1989)],アミノ酸クロマトグラム上非常に鋭いピ-クを与える他の物質と重なるため,定量分析はできなかった。8C3M群の筋肉(腓腹筋),腎臓,脾臓,尿でも著増するこの非常に鋭いピ-クを与える物質は,ヒポタウリンであることが判明した。メチオニン過剰摂取時にαーアミノーnー酪酸が蓄積されることは知られているが,その理由は明確にされていなかったが,今回の実験でも,8C食群の肝臓に蓄積したオフタルミン酸は8C3M食群で減少し,グルタチオンとαーアミノーnー酪酸が増加し,含亮アミノ酸不足食餌では肝臓中でオフタルミン酸が合成され,含硫アミノ酸が供給されるとそれがグルタチオン合成に利用され,構成成分であったαーアミノーnー酪酸が放出される,という前回提出した経路を支持した。
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