研究概要 |
本研究は、ペニシリウム属の一株が從来知られなかった新規な金属プロテア-ゼを分泌することを見出したことにはじまる.本酵素はCMーSepharoseのクロマトグラフィ-を2回くり返し,次いでFPLCにより精製した.精製酵素はポリアクリルアミド並びにSDSーポリアクリルアミド電気泳動的に均一である.精製酵素の比活性は5.8×10^<ー3>katal/kg・タンパク質である.本酵素はサ-モリシンやアスペルギルスの中性プロテア-ゼが亜鉛とカルシウムを含むのに比して、亜鉛しか含まない特性をもつ.通常,中性付近に最適pHをもつ金属プロテア-ゼは分子量が35,000〜40,000であるが,本研究の酵素の分子量はゲル濾過法で20,000,HPLC法で18,000である.等電点は9.3,最適pHは卵アルブミンに対しpH7.0付近,熱には比較的不安定であり,最適温度は50℃である. 本酵素の基質特異性を明かにするために,過ギ酸酸化したウシのインスリンβ鎖を用い,反応時間を変えて酵素反応生成物をHPLCにより分取しペプチドを精製し,アミノ酸分析,N末端シ-クエンサ-により分析した.本酵素はTyr16とLeu17間のペプチド結合をまず切断した。次いで,Glu13ーAla14間のペプチド結合とAla14ーLeu15間のペプチド結合を僅か切断することを明かにした.本酵素の特異性は、從来から知られた金属プロテア-ゼの持つ広い特異性に対して、極めて限定的な厳密な特異性をもつユニ-クな酵素であることを結論づけた.
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