研究概要 |
1.申請者らはSaccharomyces cerevisiaeのCHO1遺伝子の発現をGAL7遺伝子プロモ-タ-によって制御する融合遺伝子系を作製していた.これを,動原体DNA領域を有するために低コピ-で安定であるプラスミドYCpG11に組み込み,複合プラスミドYCpGPSSを得た.このプラスミドで染色体上のCHO1遺伝子の破壊株(YB1803株)を形質転換した.YB1803株は凝集性が無いので細胞形態変化の観察に適している.形質転換株YB1803/YCpGPSS株を,1%Dーglucoseと2%Dーgalactoseを含む培地で対数増殖期中期まで培養したのち,5%Dーglucoseを炭素源とする培地に移すと,phosphatidylserine(PS)synthaseの活性は急速に低下し,約6時間後にはほぼ検出できなくなった.PSの含量も低下し、最終的には全リン脂質の約0.3%となった.phosphatidylethanolamine(PE)の含量も低下したが,phosphatidylinositol(PI)とphosphatidylcholine(PC)の含量は9時間まで増加を続けた.特にPIの含量の相対的増加は著しく,全リン脂質の47%に達した.培養液濁度は約9時間まで増加速度が落ちることなく増加したが,菌数の増加は約6時間で止まった.このとき,約80〜90%が非出芽細胞であった.約9時間後から生菌数の低下が生じ,12時間以降急速に低下した.このような窒素含有リン脂質合成の停止にともなう細胞死の観察は初めてで,このとき,細胞膜のintegrityに変化はみられなかった.9時間以降に観察された,分解の結果と思われるリン脂質含量の低下が重要な細胞死の要因かもしれない.引続き脂質生合成異常と細胞増殖との関係を検討中である. 2.CHO1遺伝子の上流,特にHSE様の配列を含む領域を調べるために変異を導入したCHO1ーlacZ融合遺伝子を作製中である.
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