1。ヒイロキチャワンタケ・レクチン(AAL)cDNAの塩基配列。 AALの全塩基配列を決定した結果、AALはProをN末端とし、TrpをC末端とする312残基よりなり、Proの前にMet残基1つしかないのでシグナル配列がないこと等が明らかとなった。 2。AALの蛋白質化学的性質。 判明した全アミノ酸配列を解析して、AALの分子内に6回の繰り返し配列が存在することが認められた。円偏光二色性スペクトルの測定から、AALの二次構造としてαーヘリックス、βーシ-トの含有量はきわめて少ないことが認められた。 3。AALの結晶化と解析。 AALの結晶化に取り組み、六方両錐体の結晶を得た。X線回析を行ない、結晶の諸定数を決定した。 4。子実体形成過程におけるAALの出現。 子実体から再生させた菌糸と野生の子実体から粗抽出液を調製し、レクチン活性を調べたところ、菌糸では全く活性が見られず、子実体で活性が認められた。オクテロニ-法で調べると、子実体の抽出液だけが沈降線を形成した。mRNAを検出したところ、やはり菌糸には認められなかった。これらのことは、レクチンの遺伝子発現は子実体形成と関連していることをうかがわせる。 5。AAL遺伝子の存在形態。 菌糸および子実体の双方から抽出・精製した高分子DNAについてサザン・ハイブリダイゼ-ションを行なったところ、子実体には陽性のバンドが認められたが菌糸では認められなかった。このことは、菌糸の染色体DNAにはAAL遺伝子は存在しない事を示している。菌糸におけるAAL遺伝子の存在形態について検討している。
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