一般にアミノ酸の過剰をラットに与えると食餌摂取の減少と成長の抑制が認められる。近年、ある種のアミノ酸を与えると高コレステロ-ル血症が観察されることが報告された。その例として、ヒスチジン、シンチン、チロシンがある。 ヒスチジン過剰食を与えるとみられる高コレステロ-ル血症の生成の機構を明らかにすることが目的である。研究の結果、以下のことを明かにした。 1. ^3H_2Oから肝コレステロ-ルへの取り込みをin vivoの系においてしらべた。その結果、ヒスチジン過剰食群は有意に増加した。 2.コレステロ-ル合成系の律速酵素であるHMGーCoA還元酵素を測定した。ヒスチジン過剰食群において、活性型および全活性のいずれも有意に増加した。肝HMGーCoA還元酵素のmRNAはヒスチジン過剰食において、約2倍増加した。 3.コレステロ-ルの分解系の律速酵素はコレステロ-ル7αーヒドロキシラ-ゼである。この酵素活性は基本食とヒスチジン過剰食においては変わらなかった。 これらの結果はヒスチジン過剰食の摂取による高コレステロ-ル血症の生成は肝におけるコレステロ-ル合成の促進であることを明かにした。 4.ヒスチジン過剰食の摂取、あるいはヒスチジンの胃管による投与は血清と副腎のコルチコステロンの増加を引き起こすことを明かとした。 5.ヒスチジン過剰食に銅の添加は高コレステロ-ル食を改善できなかった。 以上の結果をまとめると、ヒスチジンによる高コレステロ-ル血症の生成は次のように考えられる。ヒスチジンがコルチコステロンの生成、分泌を促進し、ついで、このホルモンがコレステロ-ル合成の律速酵素であるHMGーCoA還元酵素遺伝子の転写を高め、mRNAの生成を促進する。その結果HMGーCoA還元酵素量を増やすことになり、肝のコレステロ-ル合成を高め、高コレステロ-ル血症を形成する。
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