1.動物培養細胞に対するニコチン酸類縁化合物の生理作用:本研究に使用した細胞は、マウス骨髄腫細胞、シリアンハムスタ-仔腎細胞およびヒト骨髄性白血病細胞である。その結果、添加した化合物は、すべてにおいて多少なりとも増殖を阻害した。マウス骨髄腫細胞では、トリゴネリンによる阻害は非常に弱いものであった。シリアンハムスタ-仔腎細胞の場合には、マウス骨髄腫細胞の場合と比較して、全体的に阻害を受けにくい傾向にあることがわかった。ヒト骨髄性白血病細胞においては、マウス骨髄腫細胞の場合と類似の結果が得られた。 2.幼植物に対するニコチン酸類縁化合物の生理作用:14種類の植物を実験材料とし、その種子の発芽から幼植物の生長に及ぼす影響について検討した。その結果、茎の生長を最も促進したのは、ダイコンに対するシンコメロン酸(CA)であり、その最大生長率は10mMにおいてコントロ-ルの2.18倍であった。ダイコン植物体中への[ ^<14>C]CAの取り込み量は、生長とともに増加し、葉よりも茎のほうが約5倍も多く取り込まれていた。その抽出液はラジオHPLCで分析したところ、低分子と高分子の両画分共にCA以外のピ-クは検出されなかった。さらにダイコン幼植物体の無細胞抽出液[ ^<14>C]CAと共にインキュ-ベ-ト後、同様に分析したが、CA以外のピ-クは検出されなかった。従ってCAは、代謝されずに、高分子とも結合せずに効果を表わしているようである。 3.微生物に対するニコチン酸類縁化合物の生理作用:Lactobacillus plantarumとEscherichia coliの3種類の株に種々のニコチン酸類化合物を投与して、その生育に及ぼす影響を検出したところ、E.coli BとKー12においてCAによる顕著な生育促進効果が観察された。さらに、微生物においても、CAは代謝されないことが判明した。現在、植物や微生物におけるCAの作用機作、特にその標的部位などについて検討中である。
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