緑色細胞から核タンパク質の混入のない葉緑体核様体(DNAータンパク質複合体)を単離する技術を完全に確立した。すなわち、緑色培養細胞を材料とし、液体窒素で粉砕後、超遠心密度勾配により葉緑体を高度に精製する。ついで、この精製葉緑体よりメトリズアミドを用いた密度勾配超遠心分離によりきわめて純度の高い葉緑体核様体を調製する。この核様体の純度は電子顕微鏡観察、サザンハイブリダイゼ-ション等により確認された。さらに葉緑体DNAをプロ-ブにしたサウスウエスタンハイブリダイゼ-ションにより、この核様体中にDNA結合性を有する41kDのタンパク質が存在すること、このタンパク質のDNA結合性は葉緑体DNA特異的であること、比較的穏和な条件で可溶化した場合の分子量は120kDであり、生体内では多量体として存在している可能性が推測された。さらに、cDNAクロ-ニングに必要な情報を得るために大量に核様体タンパク質を調製する方法(培養細胞粗葉緑体画分を直接2次元電気泳動し、サウスウエスタン法により同定する方法)を開発した。この方法により培養細胞の葉緑体からマイクロシ-クエンスするに十分な量のDNA結合性タンパク質を得、気相式プロテインシ-ケンサ-によりそのN末端アミノ酸を20残基決定した。その結果、41kDタンパク質は比較的塩基性アミノ酸に富むこと、核遺伝子にコ-ドされるタンパク質であることなどが分かった。しかし、決定されたN末端アミノ酸配列情報はcDNAをクロ-ニングするには不十分であり、限定分解したペプチド断片のアミノ酸配列情報をもとに緑色培養細胞のcDNAライブラリ-からのクロ-ニングを行っている。なお培養細胞から精製した核様体は転写活性を示すものの、DNA複製活性は示さないことも明らかになった。
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