研究概要 |
オボトランスフェリンのNドメイン半分子(NーOVT)およびオボアルブミン(OVA)を高濃度の尿素中スレイト-ルでSーSを環元し変性させたのち,尿素を希しゃくし,モルテングロビュ-ルを得た。OVTの構造を円偏光二色性(CD)により調べたところ,部分的に二次構造をとる準安定な構造体であることが分った。この状態に酸化型グルタチオンを添加したところ,分子内SーS結合の形成が起り,天然型の高次構造に再生できた。これらの結果から、NーOVTの巻きもどり再酸化の過程では部分的に高次構造形成した準安定なモルテングロビュ-ルを経由することが分った。一方,OVAのSーS環元型の構造を調べたところ,CDでは天然型とほとんど同じスペクトルを示した。しかし,SH基の化学修飾剤(ヨ-ド酢酸およびIAEDANS)によるシステイン残基の反応性を,新たに開発したゲル電気泳動法により分析したところ,天然型のOVAの4個SH基が,全て反応性を示さなかったのに対し,SーS環元型のOVAではSーS環元により生成した2個のSH基が反応性を示した。又,ズブチリシンによる消化性を見た実験では,SーS環元型のOVAで,これら反応性SH基近傍で水解が起ることが分った。さらに、示差熱分析によるOVAの安定性を調べた実験では、SーS結合の切断により変性温度が6.8度低下することが分った。このSH型のOVAに酸化型グルタチオンを添加したところ,天然型と同一サイトにSーS結合が再生された。これらの結果,OVAの巻きもどり再酸化の過程で形成される中間の高次構造の全体像は,天然型とほぼ同一であるものの,高次構造上限られた領域でゆらぎが起り,熱変性に対する安定性が低下していることが分った。
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