研究概要 |
ヒト血清アルブミン(HSA),オボトランスフェリンN半分子(NーOVT)およびオボアルブミン(OVA)を高濃度の尿素中スレイト-ルでSーS結合を還元し変性させたのち,尿素を希しゃくし,構造を調べた。円偏光二色性(CD),ケイ光スペクトルおよびゲルロ過クロマトグラフィ-によるスト-クス半径の測定を行ったところ,HSAとNーOVTについては部分的に折りたたまれた構造,即ちモルテングロビュ-ル状態をとることが分った。この状態に酸化型グルタチオンを添加したところ,分子内SーS結合の再生が進行し,天然型の高次構造に回復した。これらの結果から,HSAとNーOVTでは,巻きもどり再酸化の過程でモルテングロビ-ル状態を経由することが分った.一方,OVAのSーS結合還元型の構造を調べたところ,CDでは天然型と同一のスペクトルを示した。しかし,システイン残基の反応性を,新たに開発したゲル電気泳動法により分析したところ,天然型では全く反応性を示さなかったのに対し,SーS還元巻きもどり型では2個のSH基が反応性を示し,部分的に揺らぎの大きい構造をとり,不安定化されていることが分った。このSーS還元巻きもどり型に酸化型グルタチオンを添加したところ,天然型のSーS結合(Cys^<73>ーCys^<120>)が再生した。以上の結果を総合し,分泌タンパク質(HSA,NーOVT,OVA)の高次構造形成機構として次の結論を得た.即ち,多数の分子内SーS結合とドメイン構造をもつHSAとNーOVTでは,還元変性後の巻きもどり中間体として,SーS結合還元型のモルテングロビュ-ル状態を経由する。これに対し,単一のSーS結合と単一ドメインから成るOVAでは,SーS結合還元状態で天然型に近い構造をとることが明らかになった。
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