研究概要 |
数種類の糸状菌のβ-キシロシダーゼを用いてキシロースの縮合反応を行い、縮合反応におけるβ-キシロシダーゼの性質を明らかにすること、また、キシロースと生成したキシロ2糖間の平衡状態を動力学的に解明することを目的とした。 これ迄に、生成するキシロ2糖の組成から、β-キシロシダーゼを二種類に分類した。グルコースオキシダーゼを含む市販試薬を用いてキシロビオース分解活性を測定する方法を開発した。今年度は、そのつづきとして、以下の結果を得た。 1. 酵素の精製 Aspergillus nigarとMalbranchea pulchella由来のβ-xylosidaseの精製を、硫安塩析、DEAE-TOYOPERAL 650 M、Hydroxyapatiteなどを用いて行い、それぞれSDS-PAGEで単一バンドを与えるまでに精製した。 これらの精製酵素を既報の性質と比較すると、M.pulchella β-xylosidaseはM.pulchella var.sulferaと分子量と等電点が若干異なっただけであったが、A.niger β-xyl Iの方は特に最適温度(70℃)、安定な温度領域(70℃で30minインキュベートしても70%の活性が保持された)が高くなっていた。これは、酵素タンパク中の糖含量が既報の酵素よりも多いことによるものと思われた。 2. キシロースの縮合反応のシュミレーション 両精製酵素をもちいて、平衡定数、縮合反応速度定数および加水分解反応速度定数をもとめた。両酵素は共にβ1,4-キシロ2糖を最も多く生成したが、M.pulchellaの場合はβ-1,4-とββ-1,1の2種類のキシロ2糖を特異的に生成する「β-1,4-、ββ-1,1-xylodisaccharide specific enzyme」であり、一方、A.niger β-xyl Iはすべての種類のキシロ2糖を生成する「Broad specific enzyme」であった。シミュレーションの結果から、A.niger β-xyl Iの場合は、糖転移反応が関与している可能性が考えられた。
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