異なった作用で糖蛋白質細胞内転送を阻害することを見い出したブレフェルジンA、フォリマイシン並びにF4490の作用について検討を加え、以下の新知見を得た。 糖蛋白質の細胞内転送はブレフェルジンAで阻害され小胞体に蓄積する。ゴルジ構造が消失して、その構成蛋白質はretrogradeに小胞体に運ばれる。このretrogradeな細胞内転送は微小管依存性で、ノカダゾ-ル処理でウイルス糖蛋白質の細胞表層への転送が部分的に回復される。 フォリマイシン処理で、ニュ-カッスル病ウイルスの場合は融合蛋白質の細胞表層への出現が抑制される結果として合胞体形成が阻害され、水疱性口内炎ウイルスでは低分子のG蛋白質が細胞内に蓄積し、G蛋白質を含まず感染性の無いウイルス粒子が形成される。細胞内に蓄積したG蛋白質のグリコペプチドは、エンドリコシダ-ゼH感受性、コンカナバリンAーセファロ-ス親和クロマトの溶出挙動、エクソグリコシダ-ゼ感受性等の解析から、高マンノ-ス型糖鎖であると結論された。分子篩カラムクロマトとエクソグリコシダ-ゼを組み合わせた実験結果から、Man_8GlcNAc_2の糖鎖を有すると結論した。これらの知見から、ゴルジシス部位に到達する以前の過程での細胞内転送阻害が示唆された。酵母の増殖もフォリマイシンに感受性であるが、インベルタ-ゼは糖鎖不全の形で分泌される。この知見は、糖鎖構造が増殖に関与することを示唆しているとも考えられる。フォリマイシンはVーATPaseを選択的に阻害し、細胞内オルガネラの酸性化と細胞内転送の関係が示された。 F4490もウイルス糖蛋白質の細胞内転送に作用する。本物質は従来に無い強いグルコシダ-ゼ阻害活性を有することから、リピド中間体から転移された少糖鎖に存在するグルコ-ス残基のトリミング阻害の結果として細胞内転送が抑制されると結論した。
|