研究概要 |
メナキノン(ビタミンK_2)の微生物をもちいる合成プロセスを開発する研究の一環として、メナキノン合成能の増強されたスルホンアミド耐性変異株の誘導に成功した。本株は、親株と同様に界面活性剤添加培養により菌体外へメナキノンー4を漏出する.メナキノン生産のための培養条件に関する最適化を行ったところ、培養液1リットル当り280mgのメナキノンを生産し、工業的プロセスを開発するための基盤を確立することができた. 次いで、上述のスルホンアミド耐性変異株におけるメナキノン合成能の増強の要因を生合成系の酵素活性とその制御の変化から追求するために、野生株及び親株であるヒドロキシナフトエ酸耐性変異株と比較して検討した.その結果,2,3の酵素において明らかなメナキノン合成促進の要因が認められた. さらに、メナキノンの細胞外漏出現象の解析のために休止菌体系を設定し、メナキノンー4が低濃度の界面活性剤添加により漏出するのに対し、メナキノンー6は高濃度添加によっても漏出しないことを認めた。次に、細胞を分画し、メナキノンー4とメナキノンー6の局在性について検討したところ、両メナキノンに差異は認められずともに膜画分に存在していた.休止菌体系における漏出は界面活性剤と接触後直ちに起こることから、膜組成の変化が原因ではない.スフェロプラストからはメナキノンー4のみが漏出し、膜画分からは両メナキノンとも容易に漏出した.すなわち、メナキノンー4の選択的漏出には細胞壁及び膜との親和力は関係がないと考えられる、一方、シクロデキストリンの添加及び細胞の水洗によってもメナキノンー4の選択的漏出が認められた.これらの結果より、細胞膜透過性の差異を界面活性剤が増強している機構を結論とするに至った.
|