研究概要 |
分離した放線菌プラスミドpSN22の接合伝達を支配する遺伝子群を、変異プラスミドを用い検討したところ、接合伝達に直接係わる3つの遺伝子と、受容菌の増殖遅延によると考えられるポックス形成に係わる2つの遺伝子が同定された。以下に得られた結果を要約する。 1.接合伝達には3つの遺伝子が関与する:5つの遺伝子の内、traA,traB,traRがプラスミド伝達に直接関与していた。traB遺伝子産物はプラスミド伝達に必須であった。traA遺伝子はプラスミド伝達に必須ではないが、traA変異プラスミドは接合伝達頻度を著しく低下させ、ポックス形成に必須であり、受容菌の増殖遅延に関与していると考えられた。traR遺伝子はtraA及びtraB遺伝子の発現を負に制御していることが示唆され、また、この変異はプラスミドの形質転換能を消失させた。 2.ポックスの発現には2つの遺伝子が関与する:spdAおよびspdB遺伝子(申請書ではdifAおよびdifB)に変異を持つプラスミドはサイズの小さくなったポックスを形成した。 3.プラスミド接合伝達は染色体組み替えを促進する:プラスミドの接合伝達による受容菌への移行にともなって、染色体組み替え頻度も上昇した。この性質を利用し、従来の自然交雑よりも高い頻度で染色体を組み替えることも可能である。 4.traA遺伝子は新しい遺伝子か:他の放線菌プラスミドpIJ101の接合伝達遺伝子と比較すると、pSN22においても、ほぼ同様な遺伝子が分離された。しかし、traA遺伝子と同等の遺伝子は認められず新しい遺伝子と考えられた。 本年度の計画はほぼ予定通り遂行し、接合伝達に関与する遺伝子とその機能を明らかにし、染色体組み替えへの応用を示唆する事ができた。
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