研究概要 |
本研究の目的は、有機化学資源の有効利用のために、従属栄養微生物の生物活性を応用して炭酸ガスを有機化合物に固定し、有用物質を得ることにある。炭酸ガスは極めて安価な炭素資源であると同時に、地球の温暖化をもたらす原因物質であり、その有効利用の研究は将来の炭素資源や環境問題の解決の基礎となるものと考える。 当該年度に得られた主な研究実績は、(1)R.erythropolis ANー13の菌体を用いてアニリンからアントラニル酸の生産条件を検討したこと、(2)アニリンからアントラニル酸の生成を触媒するR.erythropolis ANー13の無細胞抽出液を得たこと、(3)新たなアニリン資化性菌を多数得て代謝酵素系を明らかにしたこと、である。それらの内容は、 1.R.erythropolis ANー13の休止菌体を用いて、ビオチン、CoA,アセチルーCoA、ATPがアニリンからアントラニル酸の生成を促進することを明らかにした。ビオチンはATPの存在下で、アセチルーCoAカルボキシラ-ゼ等の炭酸ガス中間キャリアとして機能することが報告されており、この実験結果は、アニリンからアントラニル酸の生成に、炭酸ガス固定反応が関与していることを示すものである。 2.アニリン培地に生育したR.erythropolis ANー13から本炭酸ガス固定反応を触媒する無細胞抽出液を得た。除核酸、硫安分画、トヨパ-ルHWー55のゲル濾過により触媒因子を部分精製することができた。今後、本触媒因子を単離・精製し、その反応機構を解析する予定である。 3.メタ開裂経路でアニリンを代謝するPseudomonas sp.FKー8ー2を分離し、key酵素であるカテコ-ル2,3ージオキシゲナ-ゼの特性を明らかにした。また、カテコ-ル1,2ージオキシゲナ-ゼのイソ酵素を生産するアニリン資化性菌を多数分離し、今後、アントラニル酸生産菌として用いることとした。
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