研究概要 |
ヘキシュロ-スリン酸シンタ-ゼは細菌のC化合物代謝の中心の酵素として重要であるばかりでなく,炭素・炭素結合形成反応を触媒する酵素で,生物進化の観点からは炭酸固定を触媒するリブロ-スビスリン酸カルボキシラ-ゼとの関連が指摘されている. 本研究では,先ず通性メチロトロ-フであるMycobacterium gastri MB19の当該酵素をクロ-ニングし,その塩基配列より酵素タンパク質の一次構造を推定することを試みた.M.gastriの染色体のDNAを切断しこれをプラスミドpUC118を用いて大腸菌にクロ-ニングし,当該酵素のN末端アミノ酸配列より合成したオリゴヌクレオチドをフロ-ブとしてコロニ-ハイブリダイゼイションを行い,5kb EcoRlおよび4kb PstI断片にヘキシュロ-スリン酸シンタ-ゼ遺伝子を見い出した. この酵素の触媒機能の特徴である,位置特異的な増炭反応に着目し, ^<13>Cーホルムアルデヒドからの安定同位体標識化合物の合成を行った.ヘキシュロ-スリン酸シンタ-ゼおよびホスホヘキシュロイソメラ-ゼを偏性メタノ-ル資化性菌であるMethylomonas aminofaciens77aより部分精製し,これに市販のホスホリボイソメラ-ゼを加えて反応を行い, ^<13>Cフルクト-スー6ーリン酸を得ることができた.ここで問題となった点は,反応平衡のために,ホルムアルデヒドが完全に消費されない点であった.この反応では原料として最も高価な ^<13>Cーホルムアルデヒドに対する収率が重要であるので,リボ-スー5ーリン酸の濃度を上げて反応平衡を右側に偏らせることを試み,添加したホルムアルデヒドの86%をフルクト-スー6ーリン酸に変換することができた.さらに,ホルムアルデヒドは酵素系にとって毒性が高いため,50mMのホルムアルデヒドを15分おきに添加することにより,90分間の反応で,203mMの ^<13>Cーフルクト-スー6ーリン酸の合成に成功した.
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