研究概要 |
1.ベクタ-の開発:1)プロモ-タ-の検討Thiobacillus属細菌用の発現ベクタ-を構築するには強力なプロモ-タ-が必要である。そこで大腸菌用のプロモ-タ-検索ベクタ-(pMC1403)を用いてT.ferrooxidans AP19ー3株の染色体DNAよりプロモ-タ-遺伝子の検索を行った。得られた29株のプロモ-タ-挿入株の中からpTFP12,15,16,26,28の各挿入断片の塩基配列の決定を行った。その結果,大腸菌のプロモ-タ-に特有な配列(TTGACAー17塩基対ーTATAAT)と相同性の高い配列が認められた。このことより,T.ferrooxidansのプロモ-タ-の一部は大腸菌RNAポリメラ-ゼにより認識,結合されることが明らかとなった。2)マ-カ-遺伝子の検討大腸菌・Thiobacillus属細菌間のシャトルベクタ-の構築には宿主中での発現を確認しうるマ-カ-遺伝子が必要である。そこで,大腸菌,酵母などでマ-カ-遺伝子として使用されているロイシン生合成系に関与する3ーイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素遺伝子(leuB)のクロ-ニングを行った。次に,遺伝子産物である3ーイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素をクロ-ンから電気泳動的に均一にまで精製した。精製酵素のNー末端アミノ酸配列を分析した結果,これまでに明らかとされている酵母好熱性細菌,好アルカリ性細菌のものと高い相同性が見られた。現在,遺伝子の全塩基配列の決定および発現制御機構についての解析を行っている。今後,マ-カ-遺伝子としての利用に期待が持たれる。またベクタ-のマ-カ-として広範に使用されている薬剤耐性は,強酸性条件下で生育するThiobacillus属には使用不可能とされてきたが,今回詳細に検討した結果,通常の使用条件の5倍程度の濃度(アンピシリン100μg/ml,クロラムフェニコ-ル120μg/ml)で有効であることが明らかとなった。 2.宿主の検討:今回,新たに取りよせたT.ferrooxidansのATCC株5株についてプラスミドの有無,抗生物質に対する耐性を検討した。その結果,いずれの株もプラスミドを有していた。しかし,比較的低濃度のアンピシリンに対し感受性の株(ATCC19859)が得られたので,今後宿主として利用できる可能性があると考えられる。
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