細菌が生産するペプスタチン非感受性かルボキシルプロテア-ゼの構造と機能

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02660124
• 研究機関: 大阪府立大学
• 研究代表者: 小田 耕平 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (50081584)
• キーワード: 酸性プロテア-ゼ / カルボキシルプロテア-ゼ / アスパルティックプロテア-ゼ / ペプスタチン非感受性 / SーPI非感受性 / Scytalidiumタイプ / ペプシンタイプ / 構造と機能

研究概要

カルボキシルプロテア-ゼ(CP)は、反応至適pHを酸性域にもつプロテア-ゼ群であり、阻害剤に対する挙動より、ペプスタチン感受性CP(ペプシンなどの既報のCP)とペプスタチン非感受性CPの2群に大別される。前者のペプスタチン感受性CPは微生物から哺乳類にまで広く分布し、それらの酵素学的性質は良く類似し、一次構造、高次構造も相同性が高い。後者のペプスタチン非感受性CPは著者らが発見したものであり、前者のCPに比べ、阻害剤に対する挙動が異なるだけでなく、基質特異性や一次構造もかなり異なる。これらのことより、ペプスタチン非感受性CPはペプスタチン感受性CPとは別の系統を辿って進化したものと予想される。
このような特徴をもつペプスタチン非感受性CPの構造と機能を解明する研究の一環として、本研究ではPseudomonas sp,No.101 CPに的を絞り検討を加えた。尚、このCPはペプスタチン感受性を問わず、原核生物より得られた最初のCPである。また、化学的に決定された一次構造(363残基)は既報のいずれのCPとも全く相同構造がなく、CPの触媒残基アミノ酸配列であるDTG配列もない。
1.Pseudomonas sp.No.101 CPの触媒残基の同定 この目的達成の為に著者らはチロスタチンと命名した特異的阻害剤を微生物より分取した。NーisovalerylーTyrーLeuーTyrosinalなる構造をもち、Ki値は2.5nMである。この構造をモデルに酵素と共有結合しうる誘導体を合成中であり、このほどエポキシル基を有する誘導体の合成に成功した(1種)。
2.Pseudomonas sp.No.101 CP遺伝子のクロ-ニング 遺伝子レベルで研究する為にこのCP遺伝子のクロ-ニングを試みた。先ず、抗体を用いて行なったが失敗に終った。次に合成プロ-ブを用いて行ない、このCPの全域をコ-ドするクロ-ンの分取に最近,成功した。

研究成果

• [文献書誌] S.Murao and K.Oda: "Structure and Properties of Non Pepstatinーsensitive Carboxyl Proteinases" Proceedings of the 18th LinderstrmーLang Conference ″Aspartic Proteinases″. 39-39 (1989)
• [文献書誌] 村尾 沢夫,小田 耕平: "放線菌由来のメタルプロテア-ゼインヒビタ-" 蛋白質・核酸・酵素. 34. 980-988 (1989)
• [文献書誌] K.Oda,他4名: "A Novel Proteinase Inhibitor,Inhibiting Some Pepstatinー Insensitive Carboxyl Proteinaes" Agric.Biol.Chem.53. 405-415 (1989)
• [文献書誌] D.Tsuru 他5名: "Inactivation of Scytalidium lignicolum Acid Proteinase B with 1,2ーEpoxyー3ー(4′ーazidoー2′ーnitrophenoxy)propane" Agric.Biol.Chem.53. 2751-2756 (1989)
• [文献書誌] K.Oda et al.: "Complete amino Acid Sequence of Pseudomonas sp.No.101 Pepstatinーinsensitive Carboxyl Proteinase" J. Biochem.(Tokyo).
• [文献書誌] K.Oda et al.: "Cloning and Sequencing of Pseudomonas sp.No.101 Pepstatinーinsensitive Carboxyl Proteinase" Agric.Biol.Chem.
• [文献書誌] K.Morihara and K.Oda(ed.by G.Winkelmann): "Microbial Degradation of Natural Products (Microbial degradation of proteins" V.C.H.(F.R.G.), (1991)
• [文献書誌] K.Oda and S.Murao(ed.by B.M.Dunn): "Aspartic Proteinasea (Pepstatinーinsensitive carboxyl Proteinases" Prenum Publishing Corp.,New York., (1991)