研究概要 |
生物間調節機能を有するジヒドロピラノン類のキラル合成を行い,以下の成果を得た。 1.抗生物質Aspyroneについて:Dーglucoseから2,3ー不飽和糖誘導体を経て,母核の(5S,6R)ーtーbutyldimethylーsiloxyー6ーmethylーtetrahydroー2Hーpyranー2ーone(1__〜)を得た。1__〜の3位にphenylseleno基を導入して2__〜とした。一方,3,4ーisopropylideneーDーmannitolから導いた(R)ー1ーformylethyl pーtoluenesulfonate(3__〜)と,リチオ化した2__〜を低温下に反応させ,続いて反応成績体を過酸化水素で酸化,phenylselenoxideを脱離させてAspyrone TBDMS誘導体とした。以上の反応で形成されたピラノン環3位の1',2'ーepoxypropyl基の立体化学は,200/1以上のジアステレオ選択性で1'S,2'S(1',2'ーtrans)体が得られた。常法通りに5位の保護基を除去し,光学的に純粋なAspyroneを世界に先駆けて合成した。合成品の物理定数は次の通り 融点112℃(天然物110℃),比旋光度ー10.1°(天然物ー10.5°)。 2.ニレノキクイムシに対する摂食阻害物質Phomopsolide Bについて:Dーglucoseから数工程を経て(4S,5S,2E)ー4,5ーisopropylidenedioxyー2ーhexenal(4__〜)を得た。次に,propargyl THPーether,ethyl chloroformate,pyrrolidineより調製したethyl 3ー(1'ーpyrrolidyl)ー4ーtetrahydropyranyloxyー2ーbutenoateをLDA,次いで上記4__〜を反応させた。反応成績体をsodium cyanoborohydride/acetic acidで還元し,炭酸水素ナトリウムで処理したところ,目的とするジヒドロピラノ骨格が得られた。5位を脱保護し,tigloyl基を導入後,6位の側鎖部分を脱保護してPhomopsolide Bを世界で初めて合成した。物理定数は次の通り 融点98℃(天然物97℃),比旋光度+220°(天然物+250°)。
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