食品加工において、凍結操作はそれ自体が保存のための有効な手段であり、さらに、凍結乾燥、凍結濃縮、凍結粉砕などの各操作の出発点でもあって、これら各操作における氷結晶生成状態の把握は極めて重要である。一方、生細胞保存法としての凍結は、やはり汎用的手段として多用されているものの、その適用妥当性を氷結晶生成のメカニズムと併せて検討した例は古典的細胞外・細胞内凍結の研究例を除けば殆ど見ることができない。本研究はこのような現象を、水→氷の相変化の観点から統一的に解析することを目的とする。 本年度は、前年度の食品中の水の凍結現象に対する伝熱工学的解析の成果の上に立ち、氷結晶構造と凍結条件との関連について検討を加えた結果、氷結晶大きさと凍結条件との関係を記述することの出来る有効な理論的モデルを得ることが出来た。次に、前進凍結濃縮法について、凍結界面構造と凍結濃縮効率との関連について、溶液系並びにサスペンション系において検討を加えた。その結果、前進凍結法における凍結濃縮効率は、固液間分配衡よりも、凍結界面における溶質の機械的取り込みに大きく支配され、濃縮効果を高めるためには、凍結界面進行速度を遅くすること、および撹拌等によって固液界面物質移動を大きくすることが重要であることが明かになった。さらに、凍結条件の制御による氷結晶構造の制御が凍結乾燥速度におよぼす影響、また、大豆タンパクゲルの凍結組織化と凍結条件との関連について検討した。 細胞凍結に関する研究においては、酵母およびブドウ培養細胞について、示差走査熱量計を用いて、細胞凍結特性の熱分析的研究を行い、凍結条件と過冷却温度との関係について検討した。これは、細胞凍結保存条件の確立のための基礎デ-タとしての意味を有している。
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