高選択性の新しいタイプの害虫防除剤を創製する目的から、本研究は次の2点について検討し、それぞれ以下のような結果を得た. 1.昆虫と哺乳動物との間における、エネルギ-代謝に関する相違点をふまえた、選択的防除剤の探索法についての検討. (1)1ーデオキシノジリマイシンおよび誘導体の、ワモンゴキブリ由来のトレハラ-ゼの阻害活性を測定し化合物間で顕著な差のあることを見いだした. (2)未交尾ワモンゴキブリ昆虫に、上記化合物を混合した餌を与えたときの、産卵鞘数とふ化率に対する影響を調べた.その結果、1ーデオキシノジリマイシンを含むいくつかの化合物は、産卵鞘の数を抑制したが、ふ化率には顕著な影響を及ぼさなかった.産卵鞘に対する抑制効果を化合物間で比較すると、それはトレハラ-ゼ阻害におけるものとよく似たものであった. 2.害虫と魚類との間の選択性のある化合物についての作用機構の解明. (1)エステル結合をもつピレスロイド系殺虫剤を合成供試し、それと構造類似でありながらエステル結合をもたないエトフェンプロックス、およびその含ケイ素類縁体も供試した. (2)一般に魚毒性が高いといわれている、エステル型ピレスロイドの摘出神経に対する作用を測定し、魚毒性が低いといわれている、非エステル型化合物の作用と比較した. (3)非エステル型化合物のワモンゴキブリや、ザリガニより摘出した神経標本に対する異常興奮の誘導はある種のエステル型ピレスロイドのものと同類の効果であったが、効果の発現する速度は、極めてゆっくりしたものであった.
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