研究概要 |
胚細胞が最初のM期を迎えるまでに,雌核雄核の融合,中心体の複製,DNA合成,染色体の凝集など一連の生化学反応が完結する必要があり,この反応系に微小管からなる細胞骨格が重要な役割を果たしている。 我々は有糸分裂を最も効果的に阻止するには,分裂装置形成を特異的に阻害するのが有効と考え,現在までにTー1をはじめとする新しい有系分裂停止物質を明らかにしてきた。今回,偏光及び蛍光顕微鏡を用いて,カシパンウニの中期紡錘体を解消させ,倍数核を誘起する新しい活性をもった化合物を微生物代謝産物中に求めた。 さまざまな環境の土壌より放線菌を分離し,10mlのPSM培地で振盪培養した後アッセイに供した。その結果,KAー48株に目的とする活性を認めた。すなわち,中期紡錘体を本培養液で処理すると,紡錘体は直ちに解消した。このことより,本培養液は微小管脱重合活性を持つことが示唆された。また,受精20分後にウニ胚を処理し,2時間後に核をDAPI染色したところ大きな核が認められ,倍数性の誘導が確認された。このことは本活性物質が微小管に特異的に作用しており,DNA合成及び呼吸に影響を与えない事を示唆している。そこで,放線菌KAー48株の生産する活性物質を明らかにするため,大量培養を行い活性物質の単離精製を試みた。 放線菌KAー48株をPSM培地(3l)で27℃,5日間振蕩培養し,濾過後培養液を酢酸エチルで分配した後,シリカゲルカラムクロマトグラフィ-及びODSカラムクロマトグラフィ-で精製し3種の活性物質を得た。 これらはsilica TLC上,Rf0.47,0.30(BenzeneーAcetone=8:2),Rf0.25(benzeneーacetoneーMeOH,7:2:1)のスポットとして確認できた。また,これら化合物はいずれも330nm付近にUVの極大吸収を示した。構造の詳細については現在検討中である。
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