研究概要 |
本研究者らは蛋白質の構造をフレキシブルにすることによって、その表面機能特性が大きく改変されることを明らかにしてきた。蛋白質工学的にリゾチ-ムの表面機能を改変できればリゾチ-ムは脂質との親和性を高め、グラム陰性菌の外膜を不安定化させ、その抗菌スペクトラムを拡大できると予想される。 こうした観点からニワトリリゾチ-ムのcDNAを用いて構造のフレキシビリチ-が増加するような部位指定変異を行い、変異cDNAは酵母発現ベクタ-PYGー100がもつグリセルアルデヒド3燐酸デヒドロゲナ-ゼのプロモ-タ-とタ-ミネイタ-の間に挿入し、S.cerevisiaeAH22に導入して発現させた。本年度はリゾチ-ムのAsn103およびAsn106のAspへの置換による脱アミド化、Cys94/76のAlaへの置換によるSS架橋の欠損により構造をフレキシブルにした変異リゾチ-ムを作成し、その表面機能特性を調べた。この結果いずれの変異リゾチ-ムも活性を保持してままで酵母生育培地中に,1mg/Lの収量で発現した。脱アミド化変異リゾチ-ム、SS欠損リゾチ-ムともに至適pHは僅かに酸性側にシフトした。野生型リゾチ-ムの変性転移点(Tm)は84度であるのにたいしてAsn103ーAsp変異型は81度、Asn106ーAsp変異型は79度、Cys94/76ーAla変異型は81度に低下した。また、これらの変異型リゾチ-ムはプロテア-ゼに対する抵抗性が2ー4倍低下した。また、これらの変異型リゾチ-ムはプロテア-ゼに対する抵抗性が2ー4倍低下し、構造が不安定化していることが示された。これらの構造の変化を反映して、変異型リゾチ-ムの乳化性、起泡性などの表面特性の改変が認められたが大きな上昇はなく、抗菌性の拡大までには至っていない。 次年度はLys13ーAla変異による塩架橋の破壊やこれまでに得られた変異体の二重変異を試み、抗菌スペクトラムを拡大した変異リゾチ-ムを作成する予定である。さらに、疎水性ペプチドの導入なども検討し、新規な機能を有するリゾチ-ムを作成する準備をしている。
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