研究概要 |
タンパク質工学的手法により、構造安定性の異なる種々の変異リゾチ-ムを作成し、その機能特性との関連を調べた。前年に作成したニワトリリゾチ-ム(HEWL)のAsn103→Asp,Asn106→Asp変異体に加え,今回はLys13→Asp,Cys94/76→Ala,Pro70→Glyの変異体の作成を行った。各々21merのオリゴDNAを用いて部位指定変異を行い、変異cDNAは酵母発現ベクタ-PYGー100がもつグリセルアルデヒド3燐酸デヒドロゲナ-ゼのプロモ-タ-とタ-ミネイタ-の間に挿入し、S.cerevisiaeAH22に導入して発現させた。変異リゾチ-ムの精製はCMトヨパ-ルによる行った。いずれの変異体リゾチ-ムも約1mg/Lの分泌量が得られた。こうして,これまで得られた変異体を用いて,構造安定性と食品機能特性(起泡性,乳化性)との相関が調べられた。構造安定性は222nmでのCDスペクトルの変化を加熱に伴って追跡することにより変性カ-ブを作成し,このカ-ブから熱力学的なパラメ-タ-をもとめることにより決定した。SS結合欠損変異体(Cys94→Ala),プロリン欠損変異体(Pro70→Gly)は構造有定性の指標である△Gが低下し,塩架橋欠損変異体(Lys13→Asp)は4.9kcal/moleまで低下した。構造安定性の低下に比例して、その界面機能特性(起泡性,乳化性)が上昇することが示された。一方,脱アミド化変異体(Asn103,106→Asp)の構造安定性(△G)は12.8kcal/moleで野生型と同じ値を示したが,プロテア-ゼ感受性で調べた構造のゆらぎが大きいことが示され,界面機能特性が高まることが明らかになった。こうして,リゾチ-ムの変異体をモデル蛋白として構造の安定性ならびに,ゆらぎが表面機能と高い相関関係があることが証明された。
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