研究概要 |
牛乳中には溶解度以上のカルシウムと無機リン酸が含まれており,それらはコロイド状リン酸カルシウム(CCP)としてカゼインミセル中に存在している.CCPはカゼインのリン酸基を介してカゼイン間に架橋していると考えられているが,CCP架橋の形成機構はまだ解明されていないので,本研究では以下のことを明らかにした. 人βーカゼインー1Pー4Pとxーカゼインと人工ミセルを調整し,高速液体ゲルロマトグラフィでCCP架橋カゼイン会合を体調べたところ,人βーカゼインー1Pと2P成分のミセルではCCP架橋カゼイン会合体は検出されず,人βーカゼインー3Pと4P成分のミセルではCCP架橋が形成されたことから,CCP架橋形成にはカゼイン分子中に少なくとも3個のリン酸基が必要であることが明らかになった.カゼインのリン酸基数が3個とか4個のように少ない場合にはリン酸基数がCCP架橋形成に大きな影響を及ぼすが,10個以上の場合にはリン酸基数の影響は小さかった.6M尿素を含むカゼイン溶液にカルシムウと無機リン酸を添加した場合にもカゼイン成分間にCCP架橋が形成されたことから,CCP架橋形成にはカゼインのサブミセル構造および規則構造は必ずしも必要でないものと考えられた.α_<sl>ーカゼインをアセチル化,スクシニル化およびシトラコニル化し,xーカゼインと人工ミセルを調製し,そのCCP架橋カゼイン会合体含量を,未修飾α_<sl>ーカゼインのミセルのそれと比較したところ,修飾カゼインミセルの方が少なかった.また,未修飾および修飾α_<sl>ーカゼインが等量存在するカゼインミセルを調製し,そのCCP架橋カゼインの成分組性を高速液体イオン交換クロマトグラフィで調べたところ,未修飾α_<sl>ーカゼインより修飾α_<sl>ーカゼインの方が小なかった.したがって,カゼインのアミノ基もCCP架橋形成に間接的に関与しているものと考えられた.卵白フラボプロテイン溶液にカルシウムと無機リン酸を添加すると分子間架橋が形成され,脱リンすると架橋されなくなることから,卵白フラボプロテインのような球状タンパク質もリン酸基を介してリン酸基カルシウムに架橋されることが分かった.
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