本研究は、一つはアメリカの育成的林業の成立過程を明らかにするとともに、採取的林業と育成的林業の併存構造を分析し、対日輸出の経済力を問題にすることである.加えてこの課題はアメリカの貿易の中における木材・林産物の比較優位の構造を明らかにすることである.もう一つはアメリカが比較優位にある木材・林産物が大量の対日輸出を結果しているが、それが日本国内でどのような問題を生んでいるか、とりわけ日本林業との競争関係の解明にある. 前者については文献サ-ベ-および統計整理によって研究を進めており、アメリカ国内におけるTimber MineからTree Farmへの移行を明らかにしつつある.またアメリカ西海岸地域の林業がOld growthからSecond growthに移行しつつある過程で、アメリカ国内市場における地域間競争の激化がこの地域の対日輸出の拡大を生んでいる.しかも、1985年以降の円高ドル高基調は、日本資本の直接投資を急増させており、それがいっそう米材輸入の拡大をもたらしている.これらに関連した資料を収集分析した. 後者については国内各地(東京、清水、吉野、前橋等)を調査し、米材産地の変貌過程を明らかにするとともに、こうした国内挽き米材製品と現地挽き製品、さらに国産材製品との競争構造を究明し、「三すくみ競争構造」を展望した.今日、木材の自給率が3割を切るまでになっているが、「三すくみ競争構造」の激化のなかで、国産材を基軸に新たなシステムが形成されつつあることも明らかになった.これは今後の日本林業の一つの道筋でもあると考えている.
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