研究概要 |
今年度の研究は,一つは木材関連多国籍企業の動向を把握することであった. 1980年以降,木材,紙パルプ産業では世界的にM&A(買収と合併)が進行し,リストラクチャリングが広がった.例えば1984年チャンピオン・インタ-ナショナルのセント・レジスの買収,86年のジェ-ムス・リバ-のクラウン・ゼラバッハの買収,90年のジョ-ジア・パシフィックのGNネコ-ザの買収などアメリカ国内の大型M&Aであった.カナダでも81年にBC州最大の企業マックミラン・ブロ-デルがノランダの傘下に入った.こうしたM&Aは国を超えて進行している.クラウン・ゼラバッハのBC州の資産はニュ-ジ-ランドの最大企業フレッチャ-・チャレンジが買収し,インタ-ナショナル・ペ-パ-は90年にドイツのサンダ-ス社を買収している.北欧でもスウェ-デンのストラ社がドイツのフェルトミユレ社を買収,同国のスベンスカ・セルロ-ズ社でもイギリスのリ-ド・パック社を買収している.また,日本企業も80年代後半の円高,金融緩和,需要の拡大を背景に海外への進出が激増した.このように米・日・北欧の資本が激しく競争している. しかし一方,近年の森林の社会的価値の劇的とも言えるシフトは資本に対する制約要因になろうとしている.例えば,カナダBC州では加・米・日の木材資本の原料基盤であるCrown Forestに新しいTenure(伐採権付与)制度を導入することが模索されている.
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