今年度の研究は、過去2年間の研究の総括である。研究メンバー2人は平成4年4〜5月に北米西海岸の林業地帯を現地調査するとともに、資料の収集に努めた。この調査結果を本研究に反映させた。 85年秋から進行した円高ドル安は、外材の輸入をいっそう促進するものになった。しかも加えて、木材産出国から日本に対して市場の開放を求める圧力が高まった。この結果、国内の木材自給率がいちだんと低下し、林業経営は後退の歩を速めた。90年林業センサスはその実態を明らかにしたものであった。農家のサラリーマン化に伴い、非農家林家の激増、農家林家であっても実質的には非農家林家であるものが主流になった。これまでは農家という点で比較的同質であったが、多様な職業をもつ林家からなり、森林を所有し経営する目的も一つに括れなくなった。また不在村の所有が増加している実態は、80年代いっそう進んだ。その一部には林業経営以外に使用する意図をもつものもあり、不在村者であっても森林組合に加入している場合には、森林を林業の場と考え後退過程に踏みとどまっているが、未加入者の多くは林業ばなれしている。いまや林業経営体として確立しているのは一部の経営に過ぎない。多くの林家が保有する管理が放棄された山林をどのように生産力に結び付けていくか、国際化時代の課題を明らかにした。
|