本研究は、ブナ二次林の成長あるいは間伐等の人為干渉によって樹冠がどのような経年変化をたどっていくかを追跡するための研究を開始することを目的とし、そのための調査方法等を検討したものである。研究の場所は、秋田営林局管内鶴岡事業区内および山形大学農学部附属演習林内のブナ二次林である。 研究の結果得られた知見は、次のとおりである。 (1)閉鎖したブナ二次林の林冠閉鎖度は極めて高く、写真の解析からは樹冠占有率が92〜99%である。したがって、林床は非常に暗く、ほとんどの地点で地上1.5m位置の相対照度は5%以下である。 (2)このような林分の林床には、樹長30cm以上のブナ稚樹が見当たらず、更新のためには間伐が必須である。 (3)ブナの結実量は、林冠に適度の空隙があるときに最大になると推定される。 (4)林冠の閉鎖状態を記録するためには、垂直上方にカメラを向けて林冠の地上写真を一定間隔で撮影することも有効な方法である。この写真を画像解析することにより容易に林冠の閉鎖度が求められる。しかし、写真撮影はかなりの曇天下で実施する必要がある。さもないと、太陽光線が立木の樹皮に反射し、画像解析時に空と樹皮の区別ができなくなる恐れがある。 (5)ラジコンヘリコプタ-を利用して林冠の空中写真を撮影するには、カメラを積載したときにラジコンヘリができるだけ安定した姿勢を保持できるように、ラジコンヘリの改良とカメラ積載装置の工夫が必要である。 (6)国有林内に設置した試験地は、営林署の収穣事業の一環として来年度に間伐が実施される予定であり、いよいよ間伐後の推移を追跡する研究がスタ-トできる。
|