研究概要 |
1.急勾配の山間地渓流においても,池田・伊勢屋が主張する混合砂礫の流送特性,すなわち混合効果がみられるかどうを河床堆積物の調査を行い検討した.大井川上流東河内川での1982年8月洪水の堆積物を精査した結果によると,この一回の洪水で形成された堆積物は,上部ではpebbleからcobbleサイズの透かし礫層と同サイズの礫の間隙が砂粒子で充填された充填礫層の互層をなす明瞭な層状構造がみられた.下部ではcobbleサイズ以上の角礫が厚く堆積していた.また,急勾配水路で砂と礫が共に移動する混合砂礫の流送実験を行い,礫が砂より速く移動することによる砂礫の平面的分級によって,この現地堆積物の上部と類似の互層構造を再現出来ることが明らかになった.なお,東河内川で見られた河床堆積物の構造は,蒲田川支流足洗谷,富士川支流大武川,小武川,富士山の大沢川でもみられた.ここまでは,現象認識を共有化するため調査,実験は全員で行った. 2.眞板は東河内川の砂防ダムの機能について事例検討した.この結果,1年確率程度の土砂流出によるダム堆砂の勾配は,元河床勾配の3/5の3%で,堆積範囲は0.5kmであるが,30〜50年確率の土砂流出では4.7%と元河床の9/10で,堆積範囲は1.8kmに及ぶことを示した.これは,基本的には上流からの流出土砂の多寡が砂防ダムの堆砂勾配,影響範囲を決めることを示すが,これに対する流送土砂の粒径分布(混合特性)の果たす役割の解明は今後の課題である.また,3基の砂防ダムを配置した模型水路に2粒径混合砂礫を流して砂防ダムの粒径調整機能についての実験を行った.この結果,これまで考えられていたように「砂防ダムによって砂礫の分級が促進され,ダムを通過するにしたがいより細かい粒子が下流に流送されるようになる」とは必ずしもならず,場合によってはダムを通過するにしたがい粗い粒子が下流に流送されることが明らかになった.さらに,ダム堆砂資料の解析から砂礫の破砕・摩耗によるwash loadの生産を無視しえないことを指摘した. 3.池田・伊勢屋は東河内,赤崩れ等の現地調査から,河床勾配が極めて大きい場所では,その取る値は連続的でなく不連続であることに気がついた.すなわち,勾配が35°前後から急に22°前後になり,この中間の値をとらないことに注目した.これについて,極めて急勾配の混合砂礫の流送実験を行い,この勾配の不連続性を実験的にも確認し,その原因について究明中である.
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