研究概要 |
前年度と同様,東河内実験渓流において砂防ダムが土砂流送にどのような影響を与えているかについての現地調査を行い,これまでのデ-タを含めて砂防ダムの土砂調節の機能を検討した。この結果,(1)砂防ダム上流の堆積物の粒径は砂防ダムの河川での位置(上流か下流か)より,ダム地点での供給土砂の粒径に大きく支配され,砂防ダムの粒径調整効果の評価が難しいこと,(2)高濃度の土砂を流送する洪水では,砂防ダム上流の最高位堆積面の縦断形は元の地形の影響を受けずにダム天端を起点とする一直線上にきれいに載り,回転的堆積が起こること,(3)その堆積勾配は大局的には上流からの供給土砂の量に比例すること,(4)その後の土砂濃度の低い洪水では,縦断形は以前の形状を取り戻す方向に変化し,砂防ダムには量的な土砂調節作用が存在するといえることが判明した。以上の(2)〜(4)は三の沢ダム上流の調査結果だが,同一区間で砂防ダムができる前と後の変化を比較したムタケ砂防ダム区間では,(5)高濃度の土砂が流送された場合,砂防ダムが無なければ平行的な堆積を示し,あれば回転的な堆積を示すこと,(6)砂防ダムがなければ,一つの洪水における河床の変動高は大きいが,あれば小さい。しかし,ダムから離れるにしたがい,ダムによる河床の侵食抑制作用は小さくなり,変動高は大きくなることが判明した。また今年度は,砂防ダム上流の縦断勾配形成に及ぼす砂礫の混合効果に関する実験も行った。この結果,(1)混合砂礫では単一粒径の粒子のように供給される砂礫濃度に比例して堆積勾配が大きくなるという単純な関係になく,混合砂礫の砂の混合比率がその移動性を変化させ,これが堆積勾配決定に大きな役割を果たしていること,(2)砂防ダムの量的調節効果ということでは,単一粒径では粒子径が小さいほど調節効果が大きく,混合粒径では細粒な粒子の混合割合がある限度を越えると急激に大きくなることが判明した。
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