研究概要 |
研究対象とした樹種のうち、クヌギについては、子葉由来の不定胚培養系を用いての、プロトプラストの単離法について検討した。その結果、酵素によるプロトプラストの単離は、不定胚発育の初期および中期が適しており、十分に生育し子葉内部にデンプンの蓄積がみられるようになった後期のものは、適当でないことが明らかになった。さらに、不定胚の得やすさなどを加味すると、実験には発育の中期にある不定胚が適当であるとの結論を得た。また、プロトプラストの単離のための、材料組織の処理方法、酵素処理の温度、時間等について検討し、最適な酵素処理方法について明らかにした。こうして得られたプロトプラストを、BAP(6ーベンジルアミノプリン)と2,4ーD(2,4ージクロロフェノキシ酢酸)をいくつかの濃度で組み合わせた改変MS培地中で培養したところ、連続した細胞分裂が誘導され、コロニ-およびマイクロカルスの形成が認められた。 一方、シラカンバでは、従来から実験してきた試験管内に生育した幼植物体からのプロトプラストの単離では、供試材料の性質や供給や不安定であることから、サスペンションカルチャ-を供試材料に用いることとし、そのためのサスペンションカルチャ-を確立した。培養中のシラカンバの葉を2、4ーDを含むMS培地上で培養し、カルスを誘導した。このカルスを、2、4ーDとBAPを含むMS液体培地上で培養することにより、サスペンションカルチャ-を得た。このサスペンションカルチャ-は同じ培地に20ー30日間隔で継代培養することによって、安定的に維持することが可能であった。
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