日長反応は樹木の発育生理の中で重要な反応である。特に、冬にむかって越冬に必要と考えられる成長停止・冬芽形成の時期は、その樹木の生存にかかわる問題である。しかし、温度の低下傾向の晩夏から初秋にかけてのみられる成長停止・冬芽形成をもたらす短日反応における温度の影響を明確にした研究は少ない。そこで、この日長反応での主明期(強光期)、補光期(弱光期)と暗期の温度を区別して、温度の影響を研究した。 ポプラの成長停止・冬芽形成における暗期効果に及ぼす影響は、明期温度25℃では、暗期効果が最も高いのは25℃で14時間日長が限界日長であるが、暗期温度10℃では12時間日長、暗期温度30℃では10時間日長が限界日長となり、暗期効果は低下する。また、明期(6時間補光期・弱光期)は20℃以上ではその効果は低下してくる。そこで、秋の夜温の低下は短日効果の抑制に、その後の朝夕の明期における気温の低下は短日効果の増進をもたらすことになる。また、明期と暗期の温度の組合せによって、同じ日長でも短日にも長日にも、その効果は変化することになる。シラカンバの成長停止・冬芽形成に及ぼす温度の影響をみると、明期温度25℃での短日効果が最も高い暗期温度15℃で、北方に分布する樹木らしくポプラに比べて低いのが目立つ。しかし、それより高い温度でも低い温度でも、暗期の短日効果は低下する。また、北海道と長野産のシラカンバの間で短日効果をもたらす限界日長に明らかな差があることが確認された。カラマツの成長停止・冬芽形成に及ぼす温度の影響をみると、シラカンバと同じ傾向をしめした。また、北海道のカラマツは、まだ、北海道の気候に完全に同調できてはいないようで、気象害にあう可能性があると考えられる。今後、各樹種の種子の産地を増やして、各地の気候の季節変化に、そこで成育している樹木がどのように同調した成育パタ-ンを示しているか解明したい。
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