研究概要 |
皆伐跡地に設けた試験地において地上部現存量,リタ-フォ-ル量,実生の動態および流出量の測定を行った.また,コナラ萌芽の伸長過程についての測定も行った。地上部現存量は伐採後の経過年数によって5年目の19.2〜23.1t/haから11年目の20.6〜47.4t/haと変化し,斜面上部と下部とでは萌芽更新を中心とする木本の回復量に違いがあることが明らかになった.また、地上部養分量は現存量に左右されるが,養分含有率が斜面下部で上部より高いことにより,その差が拡大することが明らかとなった。皆伐跡地に実生により侵入する樹種にはアカメガシワ,カラスザンショウなどの先駆樹種がみられた.出現種数は伐採後2年目に最大となり以後減少した。出現個体数は伐採直後に最も多く,伐採後の経過年数の増加とともに減少し,1年目の出現個体数の多いほど減少率が高かった。生存個体の樹高は4年目までは順調に増大したが,5年目には成長率が低下した。皆伐跡地でのリタ-フォ-ル量および養分還元量は植生の回復にともなって増加し,斜面下部の方が養分還元量の回復も速いことが明らかとなった。皆伐試験地を含む小流域の水および養分の流出量および土砂生産量を測定するために基岩の露出する渓流に量水堰を,地中流の測定のために湧水地点に小堰を設置した.測定は1990年11月から開始し,皆伐跡地での流出水の長期ハイドログラフおよび短期ハイドログラフを作成した。それによると流出水・湧水ともに降水量に対応して変化し,年間流出量を推定するメドが立った。掃流砂,浮遊砂,ウオッシュロ-ドに分けられる斜面から土壌粒子の移動量は2つの堰で平成3年度に測定する.渓流水の養分濃度は流出量と同時に分析を行ったが、平成3年度に継続して測定し,集水域での養分の収支を推定する予定である。本年度の研究成果の大部分は平成3年度の前期の継続調査結果とともに公表するべく現在準備中である。
|