氾濫原では、土砂の洗掘と堆積とがさまざまな規模で生じるが、その規模に応じて河流の周辺の土砂収支系と森林生態系の破壊の程度も相違する。さらに、これらの破壊の程度と河川周辺の森林生態系のLOCALITYによって回復過程や回復速度が違ってくる。本研究では、氾濫原での流路の変動や流路内での堆積地形変化の規模に応じて、植生と水棲動物(特に淡水魚)とがどのようにニッチを回復するかについて調査し、これから土砂収支系と森林生態系との関係を明らかにすることを目的とした。 調査対象地は、大分県玖珠川流域の長者原星生キャンプ場上流、長野県梓川流域大正池周辺の氾濫原と八右衛門沢扇状地、長崎県島原雲仙の眉山氾濫原である。調査は、河畔林の森林調査、土石流フロントの地形測量、石れきの分布調査についておこなった。 その結果、森林植生に記された「森林構造」から氾濫原の履歴を伺い知ることができ、同時に、氾濫してくる土砂の規模に対して森林構造に応じて抵抗する「力」も計測できた。図に、現在見られる森林構造の履歴を模式的にしめした。横軸は時間で、縦軸は森林構造の発達段階を示している。撹乱規模と撹乱頻度とを尺度として森林構造の発達度合をモデル化すると、土砂氾濫の規模-頻度を表すモデルとなる。現在このモデルを用いて、各地の火山山麓で土砂氾濫の規模-頻度を判定している。
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