研究概要 |
本研究では,最終的にその空間的許容範囲と回復時間との関係が明らかになった.また,樹林帯は自然回復可能な生物ダムである,という認識のもとに土石流に対する樹林の抵抗力とその後の樹林の回復過程とを明らかにした. このような森林植生に記された「森林構造」から氾濫原の履歴を伺い知ることができた.同時に,森林植生は氾濫してくる土砂の規模に対して,その時点での森林構造に応じた「力」で抵抗する.すなわち,現在成立している森林植生は現在までの氾濫堆積と森林構造との戦いの履歴であり,かつ将来の氾濫堆積への抵抗力でもある.このことから,侵食地域から生産された土砂はほとんどが下流部の森林地帯に突入しているために,下流部の森林植生の構造を上手に判読すれば,土砂生産の規模-頻度の特徴を明らかにすることができた.土砂生産の規模-頻度は確実に火山山麓の森林構造に反映しているといえた. 森林構造が土砂氾濫によって低いレベルに押し下げられることをdisturbanceと呼び,そのレベルから再び発達することをrecoveryと呼ぶ.上流から生産された土砂の氾濫規模はdisturbanceの大きさ(intensity)で表され,氾濫頻度は一定時間あたりのdisturbanceの回数(frequency)で表される.逆に言えば,植生空間において現在の森林構造を解析することによって,土砂氾濫の規模-頻度が明らかになった.
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