研究概要 |
針葉樹一次性穿孔甲虫類の中で個体密度変動が非常に顕著と考えられるモミ属・トウヒ属害虫のオオトラカミキリ Xylotrechus villioni Villard について,その[1]分布(文献調査・実地調査),[2]食害様式,[3]林内空間分布様式(特徴的な食痕を利用),[4]誘引捕獲方法を中心に調査した。 1.分布:文献記録,所在標本,食痕調査などにより,南千島国尻島・北海道全域・東北地方の一部・関東地方ほぼ一円・甲信越〜中部地方ほぼ一円・近畿地方の一部・四国山地における棲息・分布を確認し得た。今後さらに未記録地における調査を実施する。 2.食害様式:幹に対する食害様式はほぼ解明でき,その食害確認による本種棲息の調査方法はほぼ確立した。今後は枝に対する食害,樹種間・産地間での食害の違い,特に越冬態の差異について調査を続行する。 3.林内空間分布様式:被害樹木の外見的調査により単一林分内での分布調査が可能となった。東京都八王子市多摩森林科学園・京都府美山町京大芦生演習林のモミ林では,林分内の立木の70%以上に累積食害跡が見られ,しかもそれらの著しい重複はあまり見られず,1本の立木への多数の個体の同時寄生は困難であり,異常発生に至るには相当の年月を経て徐々に林分全体の密度が上昇していくことが必要と推察された。 4.誘引捕獲方法:市販甲虫誘引トラップに誘引剤・フェロモンを装着して成虫出現期の夏期に東京都八王子市多摩森林科学園・京都府美山町京大芦生演習林のモミ林,並びに福島県桧枝岐村舟岐林道にて誘引捕獲調査を実施したが,恐らくは林分全体での個体密度が低いためか,捕獲には至らなかった。今後,トラップの設置位置を再検討して実施する。なお同属で針葉樹同樹種の二次穿孔虫であるニイジマトラカミキリの捕獲が目立った。
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