研究概要 |
使用済み情報関連用紙類は,加工段階での特殊な薬品類が混入しているため,その大部分が再生紙原料の対象とされていない。そこで,本研究は,これらの古紙類を紙の原料としてではなく,セルロ-ス資源として有効に利用しようという観点から,セルラ-ゼによる分解で単糖類を生産する手段を試みた。すなわち,新しいセルラ-ゼによる分解に適した前処理条件の検討や処理を受けた繊維の微細構造の変化を検討し,酵素による分解のメカニズムの解明と効率的な分解法の確立を目的とした。 平成2年度に行った研究結果の概要は次の通りである。 1)新聞紙の酵素糖化試験:新たな粗セルラ-ゼであるP300による各種新聞紙の酵素糖化率は,平均27%であり,市販の精製セルラ-ゼRー10による平均糖化率約32%に近い値が得られた。2)プリンタ-用紙等の酵素糖化試験:感熱用紙と通常のコンピュ-タ用プリンタ-用紙の糖化率は約37%であり,コピ-用紙では約53%であった。3)オゾン処理条件の検討:新聞紙やプリンタ-用紙等の酵素糖化率を改善するための一手段として,種々の条件下でオゾン処理の効果を検討した。それらの結果,基質である紙を離解し,含水率60%程度に調湿して,気相状態でオゾン処理する方法が最も効果的であった。4)情報用紙のオゾン処理による酵素糖化率の検討:新聞紙をオゾン処理することにより,糖化率の向上が顕著に認められた。すなわち,未処理では約27%の糖化率であったが,オゾンによる5分処理で約45%に,さらに15分処理では,約64%であった。5)湿潤および乾燥繊維の細孔構造の検討:予備的実験として,未晒クラフトパルプを用いて,溶質排除法による湿潤繊維や窒素吸着法による乾燥繊維の細孔構造の検討を行った。溶媒置換法で乾燥し,窒素吸着法により測定したパルプ繊維の全細孔容積は,溶質排除法により測定した湿潤繊維の値の約30%であった。
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